脳科学で迫る幸せの秘訣――不安と幸福のあいだ

2025年12月21日の日経新聞の朝刊サイエンス面に興味深い記事が掲載されていましたので紹介します。日経新聞による、脳科学の視点から「幸福とは何か」に迫る内容です。

この記事が示唆しているのは、幸福感の個人差に、脳の構造や神経活動が関与している可能性が研究によって明らかになりつつある、という点です。理化学研究所の佐藤弥氏らの研究では、脳の奥にある「楔前部」という部位の活動が比較的穏やかな人ほど、主観的な幸福感が高い傾向にあると報告されています。楔前部は自己評価を下げたり、将来への不安を抱いたりする際に関わるとされ、過度な活動が悲観的思考と結びつく可能性が示されています。

さらに、感情処理を担う扁桃体と楔前部が連携して活動する人ほど幸福度が高いという知見も紹介されていました。他者からの支援や感謝といった情動が、脳内のネットワークを通じて幸福感に影響を及ぼすという説明は、経験的にも理解しやすいものです。

記事はまた、日本が安全で長寿な社会でありながら幸福度が低い現実にも触れ、経済的な豊かさだけでは説明できない幸福の要因を考える必要性を示しています。うつ病治療への応用が期待される脳科学研究や、欧米中心だった幸福度調査にアジア的価値観を取り入れる国際的な試みも紹介されていました。

幸福という捉えにくいテーマに対し、脳科学をはじめとする複数の学問領域が静かに輪郭を描こうとしている。その現在地を伝える記事だったと受け止めました。

日経新聞 2025年12月21日 朝刊サイエンス面
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO93350860Q5A221C2TYC000/?fbclid=IwY2xjawO2xltleHRuA2FlbQIxMQBicmlkETFOVTR5d0s1NjlPQmt1N3pOc3J0YwZhcHBfaWQQMjIyMDM5MTc4ODIwMDg5MgABHrB6ubTnbkY_UgPyZ9OLGQYDqZkoRyU82NcPy7y3Ov9OsqisPja0h9OsxDcu_aem_E3OIAYP2hj3OGPrG_USLzQ

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