今年注目の科学テーマ――AIが変える知の探究
2026年1月11日の日経新聞の朝刊サイエンス面に興味深い記事が掲載されていましたので紹介します。近年の研究動向を踏まえ、これからの科学を方向づけそうなテーマを三つに整理した内容で、なかでも強く印象に残ったのが、AIによる研究加速という話題でした。
記事が伝えているのは、大規模言語モデル(LLM)の進化によって、科学研究の進め方そのものが変わり始めているという現状です。化学合成や創薬の分野では、従来なら数百回に及ぶ試行錯誤が必要だった条件探索を、論文や実験データを学習したAIが効率よく導き出した事例が紹介されています。自然言語で書かれた知識を読み取り、仮説を立て、次の実験条件を提案するという点は、人間の研究者の思考を想起させる側面があるように感じられます。
既存薬の中から肝疾患の治療候補を見いだした研究も象徴的です。膨大な医学論文をAIが分析し、実験によって効果が確認されたという流れは、創薬にかかる時間やコストの前提を見直す可能性を示しています。さらに、LLMを搭載したロボットが実験作業を担い、研究者の負担を大きく減らしたという報告もあり、研究室の風景が少しずつ変わりつつあることをうかがわせます。記事では、仮説立案から検証までを一貫して進める自律的なAIが将来現れるかもしれない、という研究者の見方も示されていました。
一方、宇宙分野では、南米チリで稼働を始めたベラ・ルービン天文台に触れられています。空を継続的に観測することで、ダークマターやダークエネルギーの性質に迫り、宇宙の成り立ちや行く末を考える手がかりを得ようとする試みです。
医療分野では、ゲノム編集技術を用いて乳児の遺伝性疾患を治療した研究成果が紹介されました。特定の塩基を狙って修復する手法は、安全性や個別化医療の可能性を広げるものとして位置づけられています。
この記事全体を通して感じるのは、AIが単なる効率化の道具ではなく、「知を探究する主体」のあり方そのものに影響を与え始めているという点です。科学が次の段階へ進みつつあることを、静かに実感させられる内容でした。
日経新聞 2026年1月11日 朝刊サイエンス面
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOSG175T30X11C25A2000000/?fbclid=IwY2xjawPSg6dleHRuA2FlbQIxMQBicmlkETFMZUhtTGhEVE5ZSWt0QUR5c3J0YwZhcHBfaWQQMjIyMDM5MTc4ODIwMDg5MgABHsNCgk8ouH1khgq46NyK1bfAIHd8NsihlsSSqHdfKILoD5aWHUryJE_Hr7NW_aem_5-6KtlXByUh5QG6ujmwqWQ
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