見えない格差を生む「英語の壁」
2026年2月15日の日経新聞の朝刊サイエンス面に興味深い記事が掲載されていましたので紹介します。記事は、クイーンズランド大学の天野達也准教授らによる研究を手がかりに、科学研究における「英語の壁」の実態を伝えるものでした。
紹介されていた研究によれば、英語が母語でない研究者は、英語圏の研究者に比べて論文の掲載却下率が高くなる傾向があるといいます。さらに、英語で論文を執筆する際には相応の追加的な時間が必要になることも示されたとのことです。こうした負担は一時的なものにとどまらず、長期的には研究成果の蓄積にも影響しうると示唆されていました。科学分野の出版物の多くが英語で発信されている現状を踏まえると、英語で書くこと自体が研究活動の前提条件になっている構造が浮かび上がります。
とりわけ示唆的だったのは、言語の負担が単なる語学力の問題ではなく、研究時間や精神的エネルギーの配分にまで及んでいるという点です。査読の過程で英語表現の修正を求められる頻度が高いとの報告もあり、研究内容とは別の層に、もう一つの評価軸が存在していることがうかがえます。そこに生まれる差は、表面化しにくいがゆえに、いっそう根深いのかもしれません。
もっとも、英語が共通語であることによって、国境を越えて知見を効率的に共有できているのも事実でしょう。記事では、AIによる翻訳や校閲支援、大学教育での英語力向上の取り組みにも触れつつ、共通語の利点を維持しながら言語的ハンディをどう縮めていくかが問われていると伝えていました。
研究の国際化が進んだ現在、私たちは同じ土俵に立っていると思いがちです。しかし、その足元に小さな段差があるとしたらどうでしょうか。言語という見えにくい要素が、静かに格差を生み出していないか。そんな問いを投げかける記事だったように感じました。
日経新聞 2026年2月15日 朝刊サイエンス面
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO94421910U6A210C2TYC000/?fbclid=IwY2xjawQA5H1leHRuA2FlbQIxMQBicmlkETA0OXNCQzR0dDZra1pDTVBvc3J0YwZhcHBfaWQQMjIyMDM5MTc4ODIwMDg5MgABHqiskXmHo8Jgfd7WVTk-99W7sraMD7gLx0qm0JqzJLLUpF37j4Z99LsvWg2T_aem_waGen3q17B6BC1cca4qvpg
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