DNAが語る、感染症と人類の長い軌跡
2026年2月22日の日経新聞の朝刊サイエンス面に興味深い記事が掲載されていましたので紹介します。
古代人の骨に残るDNAを手がかりに、感染症の歴史を再構築しようとする研究が進んでいるという内容でした。とりわけ印象的だったのは、ペストが14世紀の「黒死病」よりはるか以前、新石器時代にはすでに人類に感染していた可能性が示されている点です。当時の人骨からペスト菌のゲノムが検出され、一定の広がりを持っていたことが示唆されているといいます。ペストは突発的な大流行としてだけでなく、長い時間をかけて人類社会と向き合ってきた感染症だったという見方が強まりつつあるようです。
また、6世紀に東ローマ帝国で広がったとされる流行についても、発掘人骨のDNA解析から歴史記録と整合する結果が得られつつあると紹介されていました。感染症が帝国の政策や社会構造に影響を及ぼした可能性を、分子レベルの証拠が補強しつつあるようです。歴史叙述と分子生物学が交差する場面といえるかもしれません。
さらに記事は、人獣共通感染症の出現にも触れます。農耕や牧畜の普及によって人と動物の接触が増えたことが、ペストやハンセン病などの広がりと関連している可能性があるとの研究成果が報告されているとのことでした。次世代シーケンサーの普及により、古いDNAを高精度で読み解けるようになったことが、こうした長期的な疫学史の再検討を可能にしているといいます。
加えて、ハンセン病の一部については、これまでの見方に再検討を促す成果も示されているそうです。古代DNAは、歴史像そのものに静かに修正を迫る力を持ち始めているのかもしれません。
過去の病原体を読み解くことは、単なる歴史探究にとどまらず、将来のパンデミックへの備えにもつながる可能性がある――記事はそのような示唆で結ばれていました。感染症は思っている以上に長い時間、人類と付き合ってきた存在のようです。DNAという分子の中に刻まれた痕跡から、その長い軌跡を読み解こうとする試みは、私たち自身の歴史を問い直す作業でもあるのだと感じさせられる内容でした。
日経新聞 2026年2月22日朝刊サイエンス面
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOSG310U50R30C26A1000000/
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