がんも老化も知らない生き物の謎に迫る
2025年4月27日の日経新聞 朝刊サイエンス面に、非常に興味深い記事が掲載されていましたので紹介いたします。
その記事は、ニシオンデンザメという、がんをほとんど発症しない400年生きるサメについての最新の研究成果を報じています。このサメの驚異的な長寿とがん耐性は、現代の医学に大きな示唆を与える可能性があるとして注目されています。
ニシオンデンザメは、北大西洋のグリーンランド近海に生息しており、最大で体長7メートルにも達します。その寿命は400年を超えるとされ、通常であればがんのリスクが高くなるはずの長寿と巨大な体を持ちながら、驚くべきことにがんをほとんど発症しないとされています。この事実は、科学者たちにとって大きな謎であり、さまざまな仮説が提唱されています。
まず注目されているのは、ニシオンデンザメの免疫システムです。東京大学の木下滋晴教授が率いる研究チームは、ニシオンデンザメが持つ免疫に関わる遺伝子に注目しています。これらの遺伝子は、異常細胞を発見し、がんを排除する働きがあるとされています。特にニシオンデンザメは、免疫遺伝子を67個も保有しており、これは他のサメの3倍以上の数です。このことが、がんへの強い抵抗力に関与している可能性があると考えられています。
さらに、ドイツの研究チームは、ニシオンデンザメが持つ「p53遺伝子」に独自の変異があることを発見しました。この遺伝子は、細胞のがん化を抑制する役割を担っており、ニシオンデンザメのがんに対する耐性を高めている可能性があります。ゾウもまた、p53遺伝子が多数存在し、がんにかかりにくいことが知られています。ニシオンデンザメの遺伝子にも、同様の機能があるのかもしれません。
一方で、ニシオンデンザメが長寿を誇る理由については、まだ完全には解明されていません。代謝が遅いことが関係しているという仮説もあります。極寒の海域に生息するため、エネルギー消費が少なく、細胞の老化を引き起こす活性酸素の生成が抑えられる可能性があるのです。巨体もまた長寿に関与していると考えられ、巨大な動物には寿命が長い傾向があることが知られています。
もし人間がニシオンデンザメのように400年生きられるとしたら、社会はどのように変わるのでしょうか?退職年齢の引き上げはもちろん、年金や医療制度の抜本的な見直しが進み、政治家が「あと300年、がんばります!」なんて発言する時代が来るのでしょうかね?住宅ローンも350年になったりして…。
日経新聞 2025年4月27日朝刊サイエンス面
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO88323270W5A420C2TYC000/?fbclid=IwY2xjawJ78nxleHRuA2FlbQIxMQBicmlkETBFU2RIVFNCcHNsa3QwNHVpAR7tLxpjIce55WUKmBgLILP8KO_yR4XV6fH0EKNH_9JVOIGc5qeS5E-rGGqCkQ_aem_acOKs5ued9T4WVOaKnjFTw
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