ジャンクDNAに潜むシスエレメント:私たちを作り出す見えざる設計図

今朝(2025年2月16日)の日経新聞サイエンス面に気になる記事が掲載されていました。
ご紹介させていただきます。
最近、私たちの遺伝子に対する理解が大きく変わりつつあることが明らかになっています。それは、従来「ジャンクDNA」と呼ばれ、無駄な部分とされてきたDNAの領域が、実は私たちの体質や病気の発症に深く関わっていることが分かってきたからです。特に、そのジャンクDNA内に存在する「シスエレメント」が重要な役割を果たしていることが注目されています。
シスエレメントは、遺伝子の働きを調整するDNAの配列で、遺伝子がどのように、どれくらい活性化されるかを制御する役割を担っています。具体的には、遺伝子からmRNAが転写される過程で、その促進や抑制を行う「黒子」のような存在です。かつてはこの領域が単なる「ジャンク」であると考えられていましたが、近年の研究で、シスエレメントが遺伝子の発現において重要な調節因子であることが明らかになりました。
これまで、ヒトの遺伝子は約2%の遺伝情報を持ち、残りの98%は無駄な「ジャンクDNA」とされてきました。しかし、シスエレメントが発見されて以降、その役割の重要性が再認識されています。実際、シスエレメントは私たちの体質を左右するだけでなく、進化の過程でも重要な役割を果たしていることが分かっています。
例えば、ヒトとチンパンジーの遺伝子にはわずかな違いがありますが、その差は遺伝子そのものではなく、シスエレメントの違いに起因している可能性が指摘されています。遺伝子の情報は似通っていても、シスエレメントが異なることで、異なる特性が現れるのです。この発見は、私たちの進化や個々の体質の違いを理解する上で大きな手がかりを提供しています。
シスエレメントの異常は、病気の原因にも深く関わっていることが明らかになっています。例えば、自己免疫疾患やがんの研究において、シスエレメントの働きが病気の発症にどのように影響を与えるのかが次第に解明されています。シスエレメントに変異が生じると、遺伝子の活動が異常をきたし、それが体に不調をもたらす原因となることがあります。
特に、免疫細胞に関する研究では、炎症性腸疾患や多発性硬化症などに関連するシスエレメントの変異が特定されています。理化学研究所のチームは、免疫細胞の1つ1つを解析し、シスエレメントがどのように病気に関与しているのかを明らかにしました。たとえば、潰瘍性大腸炎という難病の発症に関わるシスエレメントが見つかり、それが炎症を引き起こす遺伝子を過剰に活性化させることが分かっています。このような知見は、病気の予防や治療方法に新たなアプローチをもたらす可能性を秘めています。
シスエレメントの研究は、今後5~10年の間に医療や創薬、さらには病気の診断技術において大きな影響を与えると期待されています。シスエレメントの働きが詳細に解明されることで、病気の発症メカニズムの理解が進み、個別化医療の実現に向けた新たな道が開けるでしょう。また、体質や生活習慣の違いが遺伝的な要因とどのように結びついているのかも、シスエレメントを通じて明らかになるかもしれません。
こうした研究の進展によって、私たちの健康管理や病気予防の方法が大きく変わる日が来ることは間違いありません。シスエレメントは、まさに私たちを形作る見えざる設計図として、今後ますます注目されることでしょう。

2025年2月16日 朝刊サイエンス面

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOSG153PE0V10C25A1000000/?fbclid=IwY2xjawIfaBNleHRuA2FlbQIxMQABHSd6VpGR57zmkfxJrQ2Gl-ESamUbhUReKwnF3NH0grkqgz_LMBKLjosfzw_aem_IoCCgrFqcc310eq32ss9sQ

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