期待を引き寄せる先端科学:エクソソームと誤認

今朝(2025年3月2日)の日経新聞でエクソソームを用いた自由診療への警鐘記事が掲載されていましたのでご紹介します。

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インターネット上には「エクソソームが肌の老化やアレルギー性疾患の改善に期待できる」といった宣伝が氾濫しており、さらに「脳卒中や認知症予防にも効果がある」といった過剰な主張がなされているとのことです。しかし、これに関しては科学的根拠がまだ十分に確認されていないという事実も無視できません。自由診療の現場では、期待と現実のギャップに注意するべきだと専門家は警告しています。

エクソソームは、細胞が分泌する微小な粒子で、細胞間で情報を伝達する役割を担うと考えられています。近年、動物実験において炎症の抑制や組織の修復に有効であるという報告が相次ぎ、その治療効果に対する期待が高まっています。しかし、記事によると、現時点では「治験で科学的に治療効果を確認し、承認されたものはない」と、日本細胞外小胞学会の落谷孝広理事長が述べている通り、まだ実際に治療法として確立されたわけではないようです。

それでも、日本では患者への十分な説明のもと、医師が有効と判断すれば自由診療でエクソソームを使用することが可能です。こうした現状の中で、消費者が効果を過信し、誤認するリスクが高まることが問題視されています。例えば、クリニックのホームページでは、動物実験で得られた結果があたかも人間にも適用できるかのように示されていますが、実際には動物で効果があったからといって人間に同じ効果が得られる保証はないことは専門家の指摘通りです。また、エクソソームの中に含まれる成分やその影響については未解明の部分が多く、副作用のリスクも否定できません。

記事には、京都大学iPS細胞研究所の藤田みさお教授のコメントも紹介されています。藤田教授は、「iPS細胞やエクソソームといった先端技術には、患者の期待を引き寄せる力がありますが、科学的根拠に基づかない誤解が広がることで、不必要なリスクを負わせることになる」と警告しています。藤田教授の言葉からは、これらの技術がもたらす可能性と同時に、過剰な期待が生じる危険性についての懸念が強く感じられます。確かに、基礎研究段階にある技術が商業的に利用されることで、期待と現実のギャップが広がり、誤認や不安が生まれやすくなるのは避けられない現実なのかもしれません。

また、国内で流通しているエクソソーム製品についても品質が不安視されており、落谷氏らの調査によれば、十分な量のエクソソームを含む製品はわずかにとどまっているという結果が出ています。記事によれば、米国ではエクソソーム製品の投与によって感染症が発生した事例もあるとのこと。そのため、国内でも同様のリスクが懸念されているということです。

さらに、現行の「再生医療等安全性確保法」では、エクソソームが細胞治療に類似したリスクを持ちながらも、細胞そのものを投与しないため規制の対象外となっている点が問題とされています。エクソソーム治療のリスクを管理するためには、規制の強化が急務だとされていますが、2024年5月施行予定の改正法でも対象に加えられることは見送られたとのことです。この点に関して、日本再生医療学会はエクソソームも規制対象にすべきだと強く主張しているようです。

こうした背景を考えると、エクソソーム治療に対して過剰な期待を抱くことは非常にリスクが高いと言えます。専門家の間でも、患者が実効性を判断することは難しく、十分な科学的証拠が積み上がるまで冷静に見守る必要があるという意見が多くあります。誤認によって無用なリスクを負うことのないよう、消費者側も慎重になるべきです。

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日経新聞 202532日朝刊サイエンス面
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOSG17B1M0X10C25A2000000/?fbclid=IwY2xjawI7VudleHRuA2FlbQIxMQABHTmzRtp1SkQ-ZDWkvRY1ylpHT7sLOpM8Vpx0UXSylT0U9mS-FNluLoqILQ_aem_WjAy1GQPp3kzXjxpHbX9Zg

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