研究論文の未来:生成AIによる突破口

5月26日の日経新聞 朝刊サイエンス面に、サイエンス Next Views編集委員の吉川和輝さんが書かれた「論文執筆に生成AI活用 アピール力磨く武器に」という記事が掲載されていました。
その記事をご紹介します。
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近年、日本の研究者たちは国際的に評価の高い科学論文誌「サイエンス」や「ネイチャー」において、研究論文の量と質の両面で他の主要国と比べて伸び悩んでいる現状に直面しています。この問題の一因として、「言葉の壁」とトップジャーナルを狙うための論文構成のノウハウ不足が挙げられます。しかし、最近の生成AI(人工知能)の進歩が、この状況を打破する手段として注目を集めています。
学術論文の英文校正・編集支援企業が行ったアンケートでは、回答した研究者の75.0%が、1年前と比べて論文執筆にAIツールを利用する経験が増えたと答えています。具体的には、多くの研究者がAIツールの利用で英語論文の執筆スピードが向上し、研究にかかる時間が削減され、論文本数が増えたと感じています。このようなデータからも、AIツールの導入が日本の研究者たちにとって大きな助けとなっていることが分かります。
しかし、単に翻訳や表現を磨くだけではもったいないという見方も示しています。論文の構成を工夫し、強調したい研究成果を印象的にアピールする技術が必要だというのです。これは、トップジャーナルに採択されるための特別な技術や知識が必要であり、その価値が高いことを示唆しています。実際、慶応義塾大学医学部の早野元詞特任講師によると、米国の有力大学では、論文の内容をチェックする専門スタッフを研究室が抱えていることが珍しくありません。これらのスタッフは、論文誌の編集経験者などで構成されており、「アクセプトされやすい論文の書き方」をアドバイスします。こうした分業体制のおかげで、研究者は実験などに多くの時間を割けるようになり、それが新たな論文のアウトプットにもつながっています。
一方で、生成AIがこうした論文執筆の指南役としての役割を果たすことへの期待も高まっています。編集支援企業の代表は、「現段階ではAIと人による助言を組み合わせて論文指導のサービス提供をするのが現実的」と述べていますが、将来的には大規模言語モデル(LLM)などの生成AIが研究者サポートの主役になる時代が到来するでしょう。
吉川さんは、「大学発の研究成果を投資家が評価する際、まず研究論文を参照する傾向が強まっている」と述べています。つまり、論文は研究者の評価や国の研究力指標だけでなく、研究成果の社会実装を媒介する役割も増しています。このような背景からも、生成AIを活用してインパクトのある論文の書き方を習得するニーズはますます高まると考えられます。

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最近ではAIツールの使用にあたっては、その過信による弊害も考慮する必要があるという意見も散見されています。生成AIの助けを借りることは確かに便利で、わたくしたちも報告書の作成、メールなど日常的な業務にも利用し始めています。論文作成には最終的には研究者自身の洞察と創造力が不可欠と指摘する人も多く、AIに頼りすぎることで、独自性や創造性が失われる危険性もあることを認識することが重要と言われています。
わが国の研究力を再び世界のトップレベルに引き上げるためには、生成AIを有効活用しつつ、研究者自身のスキル向上と創造力を維持することが鍵となります。今後、生成AIの進化と共に、日本の研究者たちが国際的に評価される論文を増やしていくことが期待されています。

日経新聞 5月26日朝刊サイエンス面
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD208W00Q4A520C2000000/?fbclid=IwZXh0bgNhZW0CMTEAAR0M105-k_1prr2Wa-pZSW2z3NkKev0iUN8IPj2pyn6RaUiso_scNxS4G0k_aem_ZmFrZWR1bW15MTZieXRlcw

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