脱炭素への挑戦—天然水素が導く
2024年8月25日の日経新聞朝刊サイエンス面に、天然水素がどのように次世代エネルギーとしての可能性を秘め、脱炭素社会への挑戦を導くかを探る記事が掲載されていました。大変興味深いのでご紹介します。
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私たちが直面している最大の課題の一つが、地球温暖化への対応です。その解決策として、世界中で脱炭素社会の実現が叫ばれています。こうした背景の中、天然水素が新たな希望として浮上してきました。天然水素は、カーボンフリーで持続可能なエネルギー源として期待され、「ゴールド水素」や「ホワイト水素」とも呼ばれています。天然水素の登場は、私たちが求める脱炭素への挑戦において、新たな道を切り開くものとなるかもしれません。
この天然水素は、地球内部に豊富に存在する「かんらん石」と水の反応によって生成される可能性があり、特に注目されています。これまでの研究では、生成には約300〜350度の高温が必要とされていましたが、北海道大学の大竹翼教授の研究により、より低温でも天然水素が生成されることが明らかになりつつあります。これにより、これまで予想されていなかった地域でも天然水素の生成が期待され、脱炭素社会への道がさらに広がることになります。
実際に、オーストラリアのヨーク半島で行われた試験掘削では、純度95.8%の天然水素が確認されました。これにより、エネルギー資源としての実用化に向けた大きな一歩が踏み出されました。さらに、西アフリカのマリでは、すでに10年以上にわたり、天然水素が発電に利用されています。これらの事例は、天然水素が理論上の可能性にとどまらず、実際にエネルギー供給源として機能し得ることを示しています。
しかし、天然水素にはまだ解明されていない謎が多く残っています。生成メカニズムや貯留の仕組みが完全には解明されておらず、商業化に向けた課題も多岐にわたります。特に、水素は非常に小さな分子であり、地層の隙間から漏れ出す可能性が高いため、資源として十分に地下に蓄積されるかどうかは不明です。これに対して、石油や天然ガスの開発で培われたノウハウが役立つことが期待されています。
また、天然水素の掘削効率を高めるための技術開発も進んでいます。米国では、電気刺激を利用して掘削効率を向上させる技術開発が進められており、2000万ドルの支援が発表されました。これらの技術革新は、天然水素が脱炭素への挑戦を成功に導くための重要な要素となるでしょう。
国際エネルギー機関(IEA)は、天然水素の埋蔵量の評価方法について、専門家グループでの議論を開始しています。今後の研究と技術開発の進展により、天然水素の商業化が現実となれば、私たちの脱炭素への挑戦に大きな変革をもたらすことでしょう。
天然水素は、その未知の可能性を秘めています。今後の進展を見守りつつ、持続可能なエネルギー社会の実現に向けた挑戦を続けていくことが求められます。
2024年8月25日 日経新聞 朝刊サイエンス面 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOSG028NA0S4A800C2000000/?fbclid=IwY2xjawE4rcdleHRuA2FlbQIxMQABHRcuIOlwkNIVIEuWXqJZ27NhvHAXUtiWp5htZHXfnizQivCmI8yMa78pOg_aem_HR2HKhn-Go2qu58oWeZxfw
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