もろ刃の遺伝子:日本人の遺伝子とがんの関係

「科学で迫る日本人」というテーマの連載記事が、本日(2024年9月29日)の日経新聞朝刊サイエンス面に掲載されたいました。

お酒に弱いのに毎日の晩酌が欠かせないわたくしには大変気になる記事でした。ご紹介します。

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日本人特有の遺伝的特性とがんリスクについて考察しています。最近、ALDH2という遺伝子が注目されています。この遺伝子はアルコールを分解する酵素の働きに関係しており、変異型を持つ人はアルコールから生じるアセトアルデヒドという物質をうまく処理できないことがわかっています。このアセトアルデヒドはDNAを損傷させ、がんのリスクを高める原因となります。

日本人の約4割が、このALDH2の変異型を1つ持っていると言われています。いわゆる「お酒に弱い」とされる方々です。お酒を飲むと顔が赤くなったり、二日酔いになりやすい方は、この遺伝子の影響を強く受けている可能性があります。この変異型は、過去の進化の過程で東アジアの一部地域で広まったとされます。なぜこの変異が有利だったのかはまだ確定していませんが、アセトアルデヒドが病原体を防ぐ役割を果たしていたのではないかという仮説があります。とはいえ、現代においてはこの遺伝子変異がもたらす影響は必ずしも有利とは言えません。むしろ、「もろ刃の剣」となっているのです。

特に、日本人に多い胃がんや食道がんの一部は、この遺伝子変異が関与していることが国際的な研究から明らかになっています。ALDH2変異型を持つ人々は、アルコールによるDNAの損傷が積み重なり、がん細胞が成長しやすい環境を作り出している可能性が指摘されています。さらに、がん細胞が周囲に浸潤して転移するリスクも、飲酒による遺伝子変異と関連していることがわかっています。

がんの発症には多くの遺伝的要因が絡んでいますが、日本人特有の変異パターンが解明されることで、私たちがどのようにがんリスクを軽減できるのかが見えてきました。これまでに50種類以上の遺伝子変異パターンががんに関連していることが確認されていますが、その3分の1はまだ原因が特定されていません。柴田龍弘氏らの研究では、日本人の腎臓がん患者の7割が未知の要因による変異を持っていることが明らかになっており、今後の解析に期待が寄せられています。

過去には、私たちの先祖が遺伝的な変異を受け入れた結果、それが生存に有利な特性として広がっていった時代がありました。しかし、現代ではその遺伝子が逆に病気のリスクを高める可能性もあります。進化の過程で得られた遺伝的特性が、環境の変化に応じて「もろ刃の遺伝子」となることは、まさに現代の健康問題に通じる深いテーマです。

今後、さらなる研究が進めば、日本人特有のリスクに対応した予防策や治療法の開発が進み、がんとの闘いにおいて新たな可能性が開けることでしょう。私たちが持つ遺伝子の二面性を理解し、健康管理に役立てる時代が近づいているのかもしれません。

日経新聞 2024929 朝刊サイエンス面

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOSG038KH0T00C24A9000000/?fbclid=IwY2xjawFm0jtleHRuA2FlbQIxMQABHUdY368wvzkrIpA_64wezpzVL-2tniIff_M5r0jr9d2zLvE7mk25nkEXWA_aem_D91nrKZ0aNo9xuOf_0Cnjw

 

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