恐竜から鳥へ:前適応が描く飛翔への道

本日(2024年10月27日)の朝刊サイエンス面にDNA解析の進化により新たな知見が判明しつつあるという興味深い記事が掲載されてました。ご紹介します。

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鳥類は「現代の恐竜」とも称され、恐竜から生き延びたわずかな生物の一つです。その進化の過程と飛行能力の獲得については、科学者たちの長年の研究により少しずつ解明されてきました。進化の歴史をたどることで、鳥たちがどのようにして天空を自在に飛び回る存在へと進化したのかが見えてきます。

鳥類が恐竜から進化した可能性が注目されるようになったのは、1970年代に米国の古生物学者ジョン・オストロム博士が「始祖鳥」の骨格を研究したことがきっかけです。1億5000万年前に生息したとされる始祖鳥は、獣脚類と呼ばれる二足歩行の恐竜と骨格構造が非常に類似していることがわかり、鳥類の起源が恐竜であるという説が科学的に立証される足がかりとなりました。この発見以降、鳥類の起源に関する研究は大きく進展していきました。

特に進展が見られたのは1990年代後半からです。中国で羽毛を持つ恐竜の化石が次々と発見され、それまで「飛行のために進化した」と考えられていた羽毛が、実際には飛行より前に進化していた可能性が示されました。研究者たちによると、初期の羽毛は髪の毛のような細い繊維状の構造をしており、後に進化の過程で羽軸から枝分かれするように形が変化していきました。最終的には左右非対称の風切り羽が形成され、飛行に適した重要な構造となりましたが、もともとは飛行以外の目的で進化していたと考えられています。

羽毛が果たしていた役割については、現在も多くの説が唱えられています。初期の恐竜にとって羽毛は、保温やカムフラージュ、あるいは異性へのアピール手段として進化していた可能性があるとされています。また、感覚器官の役割も果たしていたかもしれません。こうした機能が結果として鳥類の飛行に役立つ「前適応」となり、最終的に空を飛ぶための重要な構造へと発展していったのです。このことは、進化が特定の「目的」に向かって進行するわけではなく、後に異なる目的へと転用されることもあるという進化の興味深い側面を示しています。

また、飛行能力を得た鳥類は、種としての生存と繁栄を大きく広げました。鳥の翼は複雑な構造をしており、羽の重ね方によって面積を変化させたり、隙間を開けて空気抵抗を減らしたりすることで、より効率的な飛行を実現しています。こうした複雑な仕組みも、もともとは異なる役割を担っていた羽毛が飛行に適応された結果であると考えられています。

現代の鳥類が恐竜と大きく異なる点の一つに、骨の構造が挙げられます。鳥の骨は非常に軽量で、中がスカスカな構造をしています。この構造のため、古代の鳥類の骨は化石として残りにくく、かつてはその形態を完全に解明するのが困難でした。しかし、2010年代以降のゲノム解析技術の進歩により、現生鳥類のDNAを比較できるようになり、鳥類がどの時代に共通祖先から分岐したのかが明らかにされつつあります。例えば、白亜紀後期にはダチョウやキジ・カモ類の祖先がすでに分化していたことがわかり、現代の鳥類に至る多様な系統が6600万年前の大量絶滅を生き延びたことが確認されました。

鳥類が大量絶滅を生き延びた理由は明確ではありませんが、飛行能力や小柄な体格、少ないエネルギー消費が要因として考えられています。これらの要因が生存に有利に働き、現在の豊かな鳥類の多様性へと繋がったのかもしれません。

一方で、鳥類の進化には今も多くの謎が残されています。彼らの羽ばたきには恐竜から受け継いだ進化の奇跡が詰まっているといえるでしょう。科学の進歩により、今後さらにその過程が解明されることを期待したいところです。

日経新聞 20241027日朝刊サイエンス面
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO84389310W4A021C2TYC000/?fbclid=IwY2xjawGWXINleHRuA2FlbQIxMQABHUvqQeeEc-pt8CI-Or5c52zg_-Bxa0kKdhPAbMPob2NNbUZHaOgTmkKFLw_aem_guAUJq01cC8XCQqLYTOLjQ

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