揺らぐ千年海流:気候変動の見えざる波紋

秋の味覚といえばやはり「サンマ」ですね。最近は不漁でなかなかおいしい物に出会えません。不漁の要因のひとつ「黒潮大蛇行」が影響しているといわれています。

日経新聞9月8日朝刊のサイエンス面に「黒潮大蛇行」に関連する記事が掲載されていましたのでご紹介します。

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地球温暖化という言葉を耳にすると、暑さや海面の上昇といった現象が思い浮かびますが、その背後には私たちが見過ごしがちな、さらに深刻な変化が進行しているのです。それは、千年にわたり地球の海を巡る「千年海流」と呼ばれる巨大な海洋循環の揺らぎです。最近の研究によれば、この海流が気候変動によって大きく弱まり、さらには停止する可能性があるというのです。

千年海流の一部を構成する「大西洋南北熱塩循環(AMOC)」は、地球の熱と栄養を運び、特に欧州を温暖に保つ役割を果たしてきました。しかし、2023年7月、デンマークのピーター・ディトレフセン教授らの研究チームは、グリーンランドの氷床融解が進むことで、AMOCが今後25年から95年の間に崩壊する可能性を指摘しました。これは、単なる寒波や猛暑といった天候の変動ではなく、地球全体の気候システムに大きな影響を及ぼすことを示唆しています。

氷床が融解すると、大量の淡水が海に流れ込みます。淡水は海水に比べて軽いため、海洋の深層へ沈み込む海流を妨げ、結果として海流全体の動きを遅らせてしまいます。この現象が進行すると、AMOCが弱体化し、さらには停止に至る可能性があるのです。過去に公開された映画『デイ・アフター・トゥモロー』で描かれたような、氷河期の再来を予感させるこのシナリオは、現実味を帯びてきています。

また、南極付近でも同様の現象が観測されつつあります。オーストラリアの研究チームによれば、南極の氷床融解が進むことで、地球全体の深層海流が弱まっているとのことです。この現象は「南極底層水(AABW)」と呼ばれる南極の深海流にも影響を与え、結果として千年海流全体が減速することが予測されています。

これらの変化が引き起こすのは、寒冷化や異常気象の増加です。IPCCの2019年の報告書では、南アジアの干ばつや南米での豪雨のリスクが高まることが懸念されています。また、海水の膨張によって北米東海岸で海面が上昇するという警告も出されています。千年海流の揺らぎが、地球規模での気候の不安定化を引き起こしているのです。

さらに、私たち日本にとっても無関係な話ではありません。日本近海を流れる黒潮もまた、温暖化の影響でその流れが変わりつつあるのです。特に、2017年以降、黒潮は「大蛇行」と呼ばれる異常な流路を続けています。この現象も、気候変動が風のパターンを変えたことで生じたものと考えられており、海洋循環がいかに脆弱なバランスで成り立っているかを示しています。

このように、千年海流の揺らぎは、私たちが日常で感じる気候変動の一部にすぎませんが、その影響ははるかに深刻で広範囲に及びます。英国エクセター大学の研究者が作成した報告書では、すでに「後戻りできないティッピングポイント」に達している可能性があると指摘されています。つまり、今後さらにCO2の排出が続けば、私たちの未来は予測不可能な方向に向かっていく可能性が高まっています。

この問題を軽視することはできません。海流の変化は気候システム全体を揺るがし、私たちの生活や地球全体の生態系に影響を与える可能性があるのです。未来の地球環境を守るために、今こそ私たちが選択する行動が重要になってくるのです。C

日経新聞 20249月8日 朝刊サイエンス面
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOSG19ACS0Z10C24A8000000/?fbclid=IwY2xjawFLKEJleHRuA2FlbQIxMQABHXqOhcdT_QOM4E-LpiAgAEXOu9O8CfbhzSOkgg56hDaZfh_TcsDgbnk2Nw_aem_DZey_Hx7pUYWxlcxXRyKAg

 

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